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空手の突き・受け技の種類と名称一覧

更新: 岸本 武彦
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空手の突き・受け技の種類と名称一覧

空手の技は、攻撃の突き・打ち・蹴りと、防御の受けに大別される体系である。松濤館流を事実上の開祖である船越義珍が広め、極真会館を大山倍達が創始したように、号令や呼称が道場ごとに揺れるため、全国100以上の道場を回る中でも同じ揚げ受けで戸惑う初心者を何度も見てきた。

空手の技は、攻撃の突き・打ち・蹴りと、防御の受けに大別される体系である。
松濤館流を事実上の開祖である船越義珍が広め、極真会館を大山倍達が創始したように、号令や呼称が道場ごとに揺れるため、全国100以上の道場を回る中でも同じ揚げ受けで戸惑う初心者を何度も見てきた。
正拳突きを土台に、追い突き・逆突き・刻み突きを足と手の関係でほどき、受けも揚げ受け・外受け・内受け・下段払い・手刀受けを高さと軌道で整理すれば、初見の技名でも動きが見えてきます。
名前を丸暗記するのではなく、当てる部位と防ぐ高さで仕組みをつかみ直すことが、稽古についていく最短の道でしょう。

突き・打ち・受け|空手の基本技を貫く3つの技術系統

空手の基本技は、まず攻撃技と防御技に分けて捉えると整理しやすくなります。
突き・打ち・蹴りは相手に当てるための技で、受けはそれを払う、流す、跳ね上げるための技です。
この大枠を先に押さえるだけで、初見の技名でも系統を推測しやすくなり、号令のたびに暗記へ追われる感覚が薄れていきます。

攻撃技(突き・打ち・蹴り)と防御技(受け)の区分

昇級審査を見ていると、技名は言えても、それが攻撃なのか防御なのかを整理できていない級位者が少なくありませんでした。
ところが系統で見直すと、動きの目的が明確になり、踏み込みや腰の回し方までそろってきます。
入門直後に号令の技名を丸暗記して混乱した経験があるからこそ、名前より先に役割をつかむことが稽古の近道だと感じます。

攻撃技のなかでも、突き技は拳頭、人差し指と中指の付け根を前へ真っすぐ当てるのが基本です。
対して打ち技は拳や手刀を振って当てるため、軌道が曲線を描きます。
どちらも「手で打つ」ように見えて、力の出し方はまったく違います。
直線で押し込むか、振りの遠心力を乗せるかで、同じ一撃でも届き方が変わるのです。

当てる部位で分かれる手技のグループ分け

手技は「どの部位を当てるか」で見分けると、名称の意味がすっと入ってきます。
拳頭、拳の甲、小指側、親指側、指先、掌の付け根という順に眺めるだけでも、正拳突き、裏拳、手刀、背刀、貫手、鉄槌、掌底といった技の違いが見えてきます。
形だけを覚えるより、接触面の設計を意識したほうが、後で応用技を理解しやすいでしょう。

たとえば正拳突きは拳頭で一点を突く技ですが、裏拳は拳の甲側を使い、手刀は小指側の側面、背刀は親指側の側面を当てます。
貫手は指先をそろえて刺すように使い、鉄槌は拳の小指側で振り下ろし、掌底は掌の付け根で押し当てる。
名前が違うのは飾りではなく、当たる面と軌道が違うからです。
ここを地図のように覚えておくと、後続の技名が一気につながります。

白帯から順に覚える基本技の全体像

基本技は、帯の色が白から茶、黒へ進むにつれて、正拳突きや揚げ受けのような土台から少しずつ増えていきます。
最初から数を追うより、少ない技を確実に身につけたほうが上達は速いものです。
昇級のたびに新しい技が加わっても、既存の基本が崩れなければ、身体の中で動きの共通点が見えてきます。

受け技も同じで、揚げ受け、外受け、内受け、下段払い、手刀受けのように役割を押さえると、号令の意味がぶれません。
前屈立ちや騎馬立ち、後屈立ちのような立ち方も含めて、土台はいつも基本から始まります。
まずは少数の基本を反復し、そこから技の幅を広げていきましょう。

突き技の種類と名称|正拳突き・追い突き・逆突き・刻み突き

空手の突き技は、まず正拳突きを土台にして、追い突き・逆突き・刻み突きへ広がっていきます。
狙う高さでも上段・中段・下段に分かれるため、技名は「どの拳を、どの高さへ、どの体の使い方で当てるか」を示す記号として覚えると整理しやすいでしょう。
攻撃技は突き・打ち・蹴りに分かれ、防御技の受けは払う・流す・跳ね上げる働きをまとめた総称です。
帯や段位の学習では、こうした基本から順に積み上げる流れがいちばん自然になります。

正拳突き — すべての突きの土台

正拳突きは、握った拳の拳頭、人差し指と中指の付け根を打点にして、手首と拳の甲が一直線になるように突く基本技です。
見た目は単純でも、ここで拳の面が崩れると力が逃げ、手首にも負担が出ます。
だからこそ、全ての突き技はこの形の応用だと考えると理解しやすい。
前屈立ちや騎馬立ちで腰を落とし、反対側の拳を脇まで引く引き手をそろえると、突きの伸びと踏み込みが一致し、力が一点に集まりやすくなります。

突きは直線的に拳頭で当てる技で、打ち技のように拳や手刀を振って曲線で当てる動きとは性格が違います。
受けも同じく、相手の攻撃を払う・流す・跳ね上げる防御の総称として整理しておくと、攻撃と防御の区分がぶれません。
道場ではこの基本形を先に固め、帯の上達に合わせて技数を増やしていくので、初心者ほど正拳突きを丁寧に反復してみてください。

追い突きと逆突きの違い

追い突きは、踏み出した足と同じ側の手で突く技です。
前進の勢いをそのまま拳に乗せられるので、遠い間合いから体重を乗せた一撃を打てます。
逆突きは、踏み出した足と反対側の手で突く技で、腰の回転を腕へ伝えて威力を出します。
足と手の左右が対応するか、逆になるか。
ここを押さえるだけで、号令を聞いた瞬間に身体が動きやすくなるはずです。

取材した道場では、級位者がこの左右の対応を覚えるために、踏み出す足と打つ手を声に出して確認していました。
すると、その場で混同しなくなり、追い突きと逆突きが別物として入っていくのが見て取れたのです。
実際、同じ正拳突きでも「中段追い突き」「上段逆突き」のように高さと突き手を組み合わせて号令されるため、型の理解にも組手の判断にも直結します。
追い突きと逆突きを対で覚えると、空手の号令がずっと読みやすくなります。

刻み突き・連突き(ワンツー)の組手技

刻み突きは、構えた状態から前足で踏み込みつつ前拳で上段を突く組手の技です。
踏み込みで間合いが約10cm伸び、相手が反応する前に届きやすいので、試合の起点としてよく使われます。
組手で初めて受けたとき、踏み込みの速さに面食らった経験がありますが、あの一歩があるからこそ「最速の技」と呼ばれるのだと体で分かりました。
前に出る意志を、そのまま攻撃の速度へ変える技なのです。

連突き、いわゆるワンツーは、刻み突きで相手の意識を上げ、続けて別の突きで圧をかける流れとして考えると使いやすいでしょう。
最初の一打で距離を奪い、次の一打で構えを崩す。
攻撃技と防御技の境目をまたいで相手の反応を読むのが組手の面白さであり、刻み突きはその入口になります。
上段・中段・下段の高さを組み合わせながら、前拳・後拳の役割を分けて稽古してみてください。

拳以外の手技|裏拳・手刀・貫手・鉄槌・掌底の使い分け

拳以外の手技は、当てる面を見ればです。
拳の甲、小指側、指先、掌の付け根をどう使うかで、裏拳、手刀、貫手、鉄槌、掌底の性格が分かれます。
突きだけでは届きにくい距離や角度を埋めるための技であり、型稽古に繰り返し入る理由もそこにあります。

裏拳・鉄槌 — 拳を握ったまま使う打ち技

裏拳は、握った拳の甲側を当てる打ち技です。
正面打ち、左右打ち、脾臓打ちのように、どこへどう振るかで呼び分けられます。
拳を大きく作り替えずに使えるため、動きが速く、相手の視線や防御の外側から不意を突きやすいのが強みです。
型稽古の中で裏拳や鉄槌が繰り返し出てくるのは、まさに間合いが詰まった瞬間に、突きとは違う軌道で攻めるためでしょう。
武道具メーカーを取材したとき、使い込まれた砂袋のへこみ方を見て、その反復が部位ごとの鍛錬そのものだと実感しました。

鉄槌は、握った拳の小指側で金槌のように振り下ろす打撃です。
拳頭で突くよりも、当てる面を広く取りやすく、突きが不得手な場面でも使いやすいのが利点になります。
裏拳と鉄槌はどちらも「拳を握ったまま」の系統ですが、前者は横や斜めの速さ、後者は上から落とす重さが中心です。
動きの質が違うので、見た目が似ていても役割はかなり異なります。

手刀・背刀・貫手 — 開手の攻撃

手刀は、開いた手の小指側の側面で打つ技です。
背刀はその反対の親指側側面で打ちます。
どちらも開手を刃物のように使う点は共通していますが、当てる面が違うだけで狙いどころと軌道の印象が変わります。
巻藁や砂袋を使った鍛錬で手刀の使い込み具合がはっきり見えたのも、この部位の違いが性能に直結するからです。
表面をなぞるように見える技でも、積み重ねはごまかせません。

貫手は、指先を揃えて相手を突く技です。
四本貫手、二本貫手、一本貫手と、揃える指の本数で分かれます。
急所を鋭く突ける反面、指を痛めやすいので、鍛錬が前提になる技でもあります。
手刀が「面」で入る技なら、貫手は「点」で刺す技です。
距離が近いほど通りやすい一方で、支える指の力と形が崩れると自分の手を傷めるため、見た目以上に繊細だと言えるでしょう。
巻藁に向かう稽古が続くのは、まさにその繊細さを身体に覚え込ませるためです。

掌底・肘(猿臂)などの近距離技

掌底は、手のひらの付け根で相手のアゴなどを押し当てる技です。
拳頭を作って打ち込むのではなく、掌の根元で力を伝えるため、突きが苦手な場面や極端に近い間合いで使いやすくなります。
手首を固めやすく、打撃の方向を見失いにくいのも利点です。
拳以外の手技を並べて見ると、狙う場所は似ていても、当て方の設計がまるで違うことが分かります。

肘打ち(猿臂)も、近距離で生きる打ち技の系統に入ります。
肘は手先より短く、相手との距離が詰まった瞬間に部位を持ち替えて攻める発想を体現しています。
実際に動いてみると、裏拳や鉄槌が型の中に組み込まれている理由がよく分かりました。
突き一辺倒では届かない場面で、掌底、肘、あるいは別の打点へと切り替えることで、攻めは途切れません。
手先だけに頼らず、間合いに応じて身体の使いどころを変えることが、この系統の打ち技を学ぶ面白さです。

受け技の種類と名称|揚げ受け・外受け・内受け・下段払い・手刀受け

空手の受け技は、攻撃を真正面から受け止めるだけでなく、相手の力線を外し、次の反撃へつなぐための技です。
高さは上段・中段・下段で整理でき、腕の軌道と当てる部位が変わるだけで名称も役割もはっきり分かれます。
号令の「中段外受け」「下段払い」のように、狙う高さと動きを組み合わせて呼ぶ仕組みを押さえると、技名が一気に読みやすくなるでしょう。

揚げ受け — 顔面を守る跳ね上げ

揚げ受けは、前腕を額の前で下から上へ跳ね上げ、顔面への上段攻撃を頭上へ逃がす受けです。
左右の拳を胸前で交差させてから回転させ上げる基本形は、単に腕を持ち上げるのではなく、軌道を切り替えて打撃線をそらすためにあります。
取材した指導者が「揚げ受けは突きを止める技ではなく軌道を逸らす技」と話した場面は印象的で、力任せに押し返す意識がほどけました。
裏拳の正面打ち、左右打ち、脾臓打ちを学ぶ際にも、この「受けて流す」感覚は共通の土台になります。

外受け・内受け — 中段をさばく回転の向き

外受けは相手の中段突きを外側から内側へ払って流す受けで、内受けは内側から外側へ流す受けです。
読者が最も混同しやすいのはこの二つですが、払う方向が逆だと覚えるだけで区別しやすくなります。
級位者が外受けと内受けを逆に覚えていたものの、払う方向を口に出しながら反復したことで混同しなくなった、という例もありました。
手刀の小指側側面と背刀の親指側側面を対比して見ると、受けの向きだけでなく、どの面を当てるかという発想にもつながります。
貫手の四本・二本・一本の分類も、こうした「どの部位をどう使うか」で整理すると理解しやすいです。

技名当てる部位主要な向き主な用途
外受け前腕の外側外から内へ払う中段突きの軌道を外へ逃がす
内受け前腕の内側内から外へ流す体の中心線を守りながらさばく
裏拳拳の甲側正面・左右・脾臓打ち近い間合いで素早く打つ
手刀小指側側面横から切る受けと反撃をつなぐ
背刀親指側側面反対側の面で打つ角度を変えた打撃に使う
貫手指先四本・二本・一本点で突き、隙間を抜く

下段払い・手刀受け — 蹴りと崩しへの対応

下段払いは、前腕を上から下へ振り下ろし、蹴りや下段突きを下方向に払い落とす受けです。
前屈立ちへ踏み込む動作と一体で行うことが多く、受ける瞬間に前へ出るため、守りから攻めへの起点になりやすい技です。
鉄槌は握った拳の小指側で振り下ろす打撃、掌底は手のひらの付け根で押し当てる打撃ですが、どちらも「大きく振るか、重さを乗せるか」という違いがあり、下段払いのような落とす軌道と相性がよいです。

手刀受けは、開いた手の手刀で受けると同時に反撃へ移りやすい受けで、後屈立ちと組み合わせて重心を後ろに残します。
受けながら次の一手を準備する意図が込められており、崩しに対する即応力が問われます。
号令で「中段外受け」「下段払い」と呼ぶときは、高さと腕の軌道が一語にまとまっているわけです。
受け技は防御の名前に見えて、実際には攻防の接続点そのものだと考えると、裏拳や掌底への展開も見通しやすくなるでしょう。

突き・受けの威力を決める立ち方・引き手・極め

空手の技は、まず攻撃の突き・打ち・蹴りと、防御の受けに分けて整理すると見通しがよくなります。
突きは拳頭、人差し指と中指の付け根を直線的に当てる攻撃で、打ち技は拳や手刀を振って当てるため軌道が曲線を描きます。
受けは相手の攻撃を払う・流す・跳ね上げる防御技の総称で、名前だけを覚えるより、立ち方・引き手・極めの働きを同時に見ると理解が進みます。
基本は帯の下の段階から順に積み上げ、技の共通原理を押さえてから段位の技へ進む流れが学びやすいでしょう。

引き手 — 突きを加速させる反対の手

引き手は、突く拳と反対側の拳を脇の下まで素早く引く動作です。
左右の腕を逆方向に動かすと体幹に回転が生まれ、前に出る拳だけで打つよりも速度と威力が乗ります。
稽古でこの動きを意識しただけで、正拳突きの手応えが変わったことがあります。
腕で押し出す感覚が薄れ、胴の回転が拳の先に集まる感覚がはっきりしたからです。
形を整える作業に見えて、実際には全身の連動を作るための要である。

引き手は突きだけの理屈ではありません。
受けを出すと同時に反対の手を引けば、上体が開きすぎず、次の動作にすぐ移れます。
受けたあとに体勢が崩れないことは、そのまま反撃の出発点になります。
高段者に取材した際にも、「技名より極めのタイミング」という言葉が繰り返し出てきましたが、引き手はそのタイミングを支える下準備として働いているのだと実感しました。

極めと締め — 一瞬で力を集める

極めは、突きが伸び切る瞬間と前足の着地を同時にそろえ、全身の力を一点に集中させることです。
踏み込みと突きがずれると、せっかく生まれた運動量が途中で逃げます。
だからこそ、拳だけを速く動かすのではなく、足の着地、腰の収まり、肩の締まりを同じ瞬間に合わせる必要があります。
締めはその終点で、体をゆるめず、打点に力を留める働きを持ちます。
見た目は一瞬でも、内部では複数の部位が同時に止まっているのです。

この一致ができると、技は大きく見せる動作ではなく、短い時間に圧を集める動作へ変わります。
受けでも同じで、受け手を出した瞬間に反対側を引き、当たったところで体幹を締めると、相手の力を受け流しながら自分の姿勢を保てます。
技名より極めのタイミングを重んじる高段者の言葉は、まさにこの集約の感覚を指しているのでしょう。

立ち方が技の威力を決める

立ち方は技の土台であり、技名の前に付く語が動作の性格を決めます。
前進の一撃には前屈立ち、左右に安定する打ち合いには騎馬立ち、受けから反撃する場面には後屈立ちが使われます。
前屈立ちは重心を前へ運びやすく、騎馬立ちは横へのぶれを抑え、後屈立ちは上体を守りながら次の動きに移りやすい。
どの立ち方も、ただ姿勢を取るためではなく、どの方向に力を通すかを決めるためにあります。

学ぶ順序もこの土台に沿って考えるとでしょう。
帯の下で基本を覚え、帯が上がるにつれて段位の技へ広げていく流れでは、名前の数を増やすより、同じ技を異なる立ち方でどう安定させるかが問われます。
名前を暗記するだけでは技は効きません。
立ち方、引き手、極めという共通原理を意識して反復すれば、突きも受けも一段安定し、動き全体が空手らしい力強さを帯びてきます。
おすすめです。

流派で変わる技の呼び方と稽古観|松濤館・剛柔・極真ほか

松濤館流は、近代空手の祖とされる船越義珍を事実上の開祖とし、遠い間合いから大きく打ち込む一撃と直線的な突きを重んじます。
流派名も、船越が開いた道場「松濤館」に由来します。
松濤館・剛柔流・糸東流・和道流は伝統4大流派と呼ばれますが、同じ基本技でも立ち方や受けの締め、使いどころが少しずつ違うため、名称だけで動きを決めつけると読み違えやすいのです。

複数流派の道場を取材して回ると、同じ「外受け」でも肘の締め方や立ち方が違い、最初は戸惑いました。
移籍してきた稽古者が旧道場の呼び名と新道場の号令の違いに苦労する場面も何度も見てきましたが、そこで役立つのが呼称と動作の読み替えです。

4大流派と技名の対応

伝統4大流派の松濤館流・剛柔流・糸東流・和道流は、共通の基本技を持ちながらも、動作の解釈に幅があります。
たとえば同じ受けでも、どこで力を止めるか、腰をどこまで入れるか、立ち方を深くするか浅くするかで、見た目も手応えも変わります。
だからこそ、技名が同じでも「何をどう守る受けか」「どこへ返す突きか」を流派ごとに見ておく必要があります。

流派位置づけ技の見え方稽古で意識されやすい点
松濤館流伝統4大流派直線的な突きが強く出る遠い間合いからの一撃、伸びのある攻防
剛柔流伝統4大流派近い距離での締まりが目立つ体の連動、受けから攻めへの切り替え
糸東流伝統4大流派多彩な受けと形の整理が際立つ技の整理、細かな運用の幅
和道流伝統4大流派体さばきが滑らかに見える受け流し、位置取り、体の逃がし方

この違いは優劣ではなく、技をどう理解し、どう磨くかの差です。
松濤館流の直線的な突きに慣れた人が剛柔流の稽古に入ると、同じ号令でも身体の使い方が変わって見えるはずです。
逆も同じで、流派の名前を覚えるだけでは足りません。
動きの背景まで結びつけて覚えると、道場をまたいだときに迷いにくくなります。

伝統派(寸止め)とフルコンタクトの技の使い方

極真会館は大山倍達が創始したフルコンタクト系で、直接打撃を当てて競います。
これに対して、伝統派の寸止めは相手に当てる直前で止める考え方が基本です。
同じ突きでも、前者は当て切る力と打たれ強さが問われ、後者は間合い、極め、制御が問われるため、稽古の意味が根本から変わります。

稽古観極真会館伝統派(寸止め)
打撃の扱い直接打撃を当てる直前で止める
突きの役割実際に効かせる間合いと極めを見せる
鍛え方打たれ強さ、踏み込み制御、精度、距離感
試合の感覚体の接触が前提接触を抑えた展開

現場では、この違いを理解していないと「同じ技なのに通じない」と感じやすいものです。
取材で複数流派の道場を回ったとき、外受けひとつでも肘の締め方が違い、受けた瞬間の体の安定が変わることを何度も見ました。
寸止めで磨いた人がフルコンタクトの場に立てば当て方に戸惑い、フルコンタクトの稽古者が伝統派に入れば止める精度に神経を使うでしょう。
流派の差は技術の差である前に、稽古観の差なのです。

道場が変わったときの名称の読み替え

同じ技でも、呼称は流派や道場で揺れます。
揚げ受けは上段受けとも呼ばれ、号令の言葉だけが違って見えることがあります。
道場を移ったとたんに「知っているはずの技」が別名で呼ばれると戸惑いますが、一般名称とその道場での呼び方を対応づけておけば、動作の理解は一気に楽になります。

移籍してきた稽古者が旧道場の呼び名をそのまま使い、周囲の号令とずれてしまう場面も珍しくありません。
そういうときは、技名を一つずつ並べた対応表を作り、外受けや揚げ受けのような基本技から整理していくと、次第に動きと名称が一致してきます。
言葉を覚えること自体が目的ではなく、号令の違いを越えて同じ身体操作を引き出すことが狙いです。
道場が変わったら、まず名称を読み替えてみてください。
そこから稽古が落ち着きます。

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岸本 武彦

剣道四段・居合道三段。武道専門誌の編集部に8年在籍し、全国100以上の道場を取材。武道具の素材・構造分析と技術解説を得意とします。

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